2016年5月30日
米国よりも多い「総額」
なるほドリ 米大統領選で共和党候補の指名を確実にしたトランプ氏が同盟国に米軍駐留経費の全額負担を求めているね。
記者 トランプ氏は米メディアのインタビューで日本などを名指しし、「彼ら(同盟国)が全ての経費を払うべきだ」などと発言しています。背景には、米軍の軍事力に自国の安全保障を依存する「安保ただ乗り」との根強い批判があります。
Q 日本の費用負担はどうなっているの?
A 日米地位協定に基づき、日本が基地提供に関する経費を、米国が基地の維持や作戦に関する経費を負担するのが原則です。
ただ、高度経済成長による物価高や米国の財政悪化を理由に、1970年代後半から日本が基地従業員の労務費の一部や施設整備費を、1987年度以降は米国に負担義務のある従業員の基本給や光熱水費なども負担するようになりました。「思いやり予算」と呼ばれるもので、安保ただ乗り論の批判をかわす狙いもありました。思いやり予算は日本の財政悪化を受け、99年度の2756億円をピークに減少傾向に転じ、現在は約1900億円で推移しています。
Q 基地の整理縮小費用も日本が負担していると聞いたよ。
A その通りです。
96年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告に基づく土地の返還や騒音軽減などの費用と、普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設や在沖縄海兵隊のグアム移転といった 米軍再編の費用も日本は負担しています。米軍再編経費は移転事業の進展に伴い、大幅に増額しています。さらに、米軍用地の借り上げ料や 基地周辺対策費なども合わせると、2015年度で総額約7250億円を日本側が支出しています。政府の沖縄振興予算の2倍以上の額です。
Q かなり負担しているね。
A 16年度に米国が在日米軍に支出する予算は 55億ドル(約6000億円)で、日本の方が多く支出しています。 04年に米国がまとめた資料によると、米軍駐留経費に占める負担割合は、韓国やドイツなどの3~4割に比べ、日本は7割以上に及びます。安全保障関連法の施行で自衛隊の活動が拡大することも踏まえ、財務省の審議会では「経費負担を見直し減額していくことが必要」と提言しています。
Q トランプ氏の発言に日本ではどんな反応が出ているの?
A 元防衛相の石破茂地方創生担当相が「日米安全保障条約をもう一度よく読んでほしい」と述べるなど困惑が広がっています。多くの駐留経費を負担していることや、日本による基地提供が米国の国益にも即しているという認識があるためです。自衛隊関係者は「日本から出ていって困るのは(アジアでの影響力を維持したい)米国の方だ」と指摘しています。
- 特別協定による負担のうち、訓練移転費は、在日米軍駐留経費負担に含まれるものとSACO関係経費及び米軍再編関係経費に含まれるものがある。
- SACO関係経費とは、沖縄県民の負担を軽減するためにSACO最終報告の内容を実施するための経費、米軍再編関係経費とは、米軍再編事業のうち地元の負担軽減に資する措置に係る経費である。他方、在日米軍駐留経費負担については、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保していくことは極めて重要との観点から我が国が自主的な努力を払ってきたものであり、その性格が異なるため区別して整理している。
- 在日米軍の駐留に関連する経費には、防衛省関係予算のほか、防衛省以外の他省庁分(基地交付金等:381億円、30年度予算)、提供普通財産借上試算(1,640億円、30年度試算)がある。
- 四捨五入のため、合計値があわないことがある。