中央に松の木が育つ廃棄パットと引き換えにされた高江の暮らし
SACO という欺瞞 ~ その ( 1 ) 北部訓練場
北部訓練場とは
北部訓練場は、沖縄県国頭郡の国頭村と東村にまたがるアメリカ海兵隊の基地。英語名は「キャンプ・ゴンサルベス」(Camp Gonsalves) あるいは「ジャングル戦闘訓練センター」(Jungle Warfare Training Center)。
1972年時点の面積 約86,914千㎡
2017年時点の面積 36,584千㎡
やんばるの森の生物多様性
北部訓練場のある国頭村及び東村で生息が確認された又は生息が可能或いは推定される、重要な種、貴重な種等(動物)は 46 種類いる。
沖縄県・米軍基地環境カルテ
やんばるの森はいのちの水がめ
やんばるの森は沖縄島のいのちの水がめ。県土保全、水源かん養林の大きな機能をはたす。北部5ダムはすべてつながり、沖縄県民の水がめとなっている。しかしそこはまた同時に米軍の訓練場である。つまり県民の水がめが米軍基地のなかにあるということだ。
後に見るように、米軍ヘリはダム上空や周辺を飛び、また実際に過去にはダム建設現場周辺で墜落事故も起こしている。
北部訓練場の歴史
- 1955年: 4月4日-24日、初の訓練 (当時は琉球政府への通知が必要)
- 1957年: 国有地と私有地を強制接収し「北部海兵隊訓練場」として使用開始、当時は林業を守るため実弾演習はしない条件だった。
- 1970年12月22日: 伊部岳闘争。米軍は秘密裡に実射訓練場建設を進め、伊部岳での実弾射撃訓練を村に通告。村議会は抗議決議をだし住民は強く抗議、演習を阻止する。
- 1987年1月: 安波ダム南約270m地点にハリアーパッド建設を計画したが、地元の強い反対で阻止。
- 1998年3月12月22日: 安波訓練場の返還。
- 1996年12月: SACO 最終報告で北部訓練場の過半を返還することを合意
- 1999年4月: 7ヶ所 (後に6ヶ所に変更)のヘリ着陸帯を移設後、過半を返還する条件がつけられる (日米合同委員会合意)
- 2016年7月11日: 衆院選選挙で基地反対派候補者伊波洋一が現職の沖縄担当大臣(当時)島尻安伊子にゼロ打ち圧勝したその9時間後の朝6時ごろ、髙江に機動隊が大挙し、ヘリパット建設工事が強行される。9月13日、地元の抗議を回避するため自衛隊ヘリで工事車両を空輸。12月22日、面積の過半に相当する4,010ヘクタールが日本に返還。
- 2017年12月: 政府は1年で予算約3億円かけ「支障除去」を終えたとして引き渡しを完了したが、いまだ多くの廃棄物が放置されたままである。
- 2018年6月29日: 政府は返還地約3,700ヘクタールをやんばる国立公園区域に編入。
- 2021年7月26日: ユネスコ世界自然遺産登録が決定。
2017年の返還地について - SACOという欺瞞
ひどい話だが、日米両政府は米兵による少女暴行事件を「契機」として、沖縄抜きで米軍基地統合刷新計画を進めた。その内容は、古い施設を「返還」し、その「条件」として、基地を沖縄県内で移設し、日本側が新しい米軍施設を建設してさし上げる、というものだった。「移設太り」である。
1995年9月の沖縄県での米兵による少女暴行事件を契機に、日米両政府は米軍基地の整理・縮小を協議するために特別行動委員会(SACO)を設置。96年12月に県内11施設、計約5000ヘクタールの返還を盛り込んだ最終報告をまとめた。
そのSACO対象11施設のなかには北部訓練場、および隣接する安波訓練場が含まれている。
北部訓練場
以下の条件の下で、平成14年度末までを目途に、北部訓練場の過半(約3,987ヘクタール)を返還し、また、特定の貯水池(約159ヘクタール)についての米軍の共同使用を解除する。【条件1】北部訓練場の残余の部分から海への出入を確保するため、平成9年度末までを目途に、土地(約38ヘクタール)及び水域(約121ヘクタール)を提供する。
【条件2】ヘリコプター着陸帯を、返還される区域から北部訓練場の残余の部分に移設する。
日米地位協定では米軍には原状回復義務もなく、古い施設のクリーンアップと新設される北部訓練場の施設「統合強化」は、日本の税金で賄われる。
- 北部訓練場に接岸水域を提供し、水陸両用訓練地として機能刷新拡大する。
- 劣化しほとんど使用していない古いヘリパットを日本に「返却」し、オスプレイ対応ヘリパットを日本に新設してもらう。
提供された海域と連結部分
松の木のはえるヘリパットをポイ捨て
年代物のヘリパットを日本にポイ捨てし、新しいオスプレイ対応ヘリパットを建設する。それが SACO の代替施設という「条件」なのだが、どれほど「使ってないヘリパット」だったのかは、あまり日本の国民には知らされていない。実際にみてみよう。
上から順に「返還」された旧ヘリパットの「使用」状況をみてみよう。これらは防衛局の公式の調査結果である。
LZ-FBJ (26°45'40.9"N 128°16'22.2"E)
1970 年に実弾射撃訓練場として整備されるが、中止されヘリパッドとして利用されていた。 ヘリパッドは露岩部分が主体である。シートやパイプ、薬きょうなどが確認された。周辺ではシートや鋼材、コンガラ、有刺鉄線など確認された。
LZ-1 (26°45'08.4"N 128°15'50.2"E)
ヘリパッドは平坦な露岩部分が主体であり、部分的に砕石が敷かれていることが確認される。コンクリート基礎や薬きょうなどが確認された。周辺では工事看板、コンガラや空き瓶などが確認された。
LZ-1A (26°45'18.6"N 128°15'49.4"E)
ヘリパッドはほとんどがススキや樹木に覆われている。周辺では、空き缶、コンガラのほか、タイヤや有刺鉄線、電子機器も確認された。
LZ-2 (26°44'57.3"N 128°16'28.0"E)
ヘリパッドは平坦な露岩部分が主体であり、部分的に砕石が敷かれていることが確認される。薬きょうが確認された。中央部にも松が生えている。
LZ-2A (26°44'50.2"N 128°16'40.0"E)
ヘリパッドはほとんどがシダで覆われており、局所的に露岩部分が存在する。周辺ではタイヤ、空き瓶が確認された。
LZ-3 (26°44'19.3"N 128°17'22.4"E)
ヘリパッドは平坦な露岩部分が主体であり、部分的に砕石が敷かれていることが確認される。コンクリート基礎や薬きょうなどが確認された。周辺では空き瓶、タイヤなどが確認された。
LZ-21 (26°38'31.2"N 128°13'00.8"E)
ヘリパッドは露岩部分が主体であり、部分的に砕石が敷かれていることが確認される。包装容器や薬きょうなどが確認された。周辺では空容器、ビニルゴミなどが確認された。
沖縄防衛局「北部訓練場(28)過半返還に伴う支障除去措置に係る資料等調査報告書」PDF (平成29年12月)
ヘリパットの中央に松の木が育つなど、まるで冗談みたいだ。ベトナム戦争時代に建設し、どれだけ使用されていなかったヘリパットなのか、これだけでもお分かりたただけたかと思う。
中央に松の木が育つような遊休化した (使わない)ヘリパットに、なぜそもそも代替施設が必要なのだろうか。
しかもオスプレイ対応のヘリパットを、高江住民の住んでいる地域にぐるり取り囲むように建設する。これが高江のヘリパット建設。使ってないものに「代替施設」は必要ですか。必要ありません。このような欺瞞が山のように詰まっているのが、あの SACO なのです。
ヘリ墜落はダムのそば
北部訓練場は、前述したように北部5ダムと沖縄の水源地そのものを基地として使っているものであり、いったん事故が起これば、水源が汚染される可能性がある。
- 1973年8月2日: 普天間飛行場所属CH-46ヘリが伊湯岳頂上付近で墜落。
- 1975年6月24日: 普天間飛行場所属CH-46ヘリが安波ダム建設工事現場で墜落。
- 1980年12月19日: 普天間飛行場所属CH-46ヘリが安波ダム貯水予定域に墜落。
- 1988年10月31日: 普天間飛行場所属CH-46ヘリ2機が飛行訓練中に衝突、1機が伊湯岳墜落。
現在わかっているだけでも、2017年度に返還された区域内で、過去4度のヘリ墜落事故があった。そのためクリーンアップの調査を行う防衛局は、当然、米軍に対し過去のデータの提供を求めた。もちろん新規の土地や新施設を建設し提供するのであるから、米軍が情報を日本側に提供するのは当然と思われる。
で、米軍の日本の防衛局に対する返答は次のとおりである。
沖縄防衛局「北部訓練場(28)過半返還に伴う支障除去措置に係る資料等調査報告書」PDF (平成29年12月)
いつものことではあるが、米軍の誠実さ加減がよくわかる事例として記憶しておきたい。
ということで、防衛局は、米軍の協力なく、自力で「独自に」過去4度の墜落事故現場を「特定」しなければならなかった。なんという徒労と税金の無駄遣いだろう。
水源が米軍基地に接収されていれば、永遠に水に関して安心できません。
沖縄防衛局「北部訓練場(28)過半返還に伴う支障除去措置に係る資料等調査報告書」PDF (平成29年12月)
高江ヘリパット建設
このように、ほとんど使われていなかった古いヘリパットの「代替施設」として、日米は新たに高江の住宅区域を囲む6ヵ所のヘリパット建設計画に合意した。もちろん住民は反対し続けた。
2007年7月: 高江の座り込みが始まる。
2008年11月: 国 (沖縄防衛局) は、高江住民ら15名を通行妨害で訴えた。その中には反対団体代表の8歳の女の子も含まれていた。高江スラップ訴訟。
北部訓練場と米軍廃棄物
北部訓練場 安波ダム周辺工事サイト周辺のゴミ
沖縄防衛局「北部訓練場(28)過半返還に伴う支障除去措置に係る資料等調査報告書」PDF (平成29年12月)
安波ダム周辺。いずれも投棄されている包装容器とは、米軍のレーション (戦闘糧食) の容器。米軍はよく基地の外でのゴミ拾いボランティアを広報しているが、基地のなかでのゴミの扱いはこの通りである。
宮城秋乃さん「大量の廃棄物が見つかり、さらにこんな大きなものまであるので、あまりにもずさんだなと思います」
今年六月、警察がその宮城秋乃氏を家宅捜査しパソコン等没収、書類送検という。
ここはいったいどこなんでしょうか。
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キャンペーン · 宮城秋乃さんへの威力業務妨害での家宅捜査は不当なものであり、起訴の無いように求めます · Change.org